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「……どうしたら、俺に帝国への敵意がないと証明できますか?」
沈んだ声が割って入る。それはどんな声よりも響いて聞こえた。
被告人席に立ったまま、チェルルは震えるように自らの手を握る。そしてそれを、スッと前に出した。
「俺は、この国に大切な人ができました。一生、その人の側にいたいんです。その為に戻ってきました。その人の事を、愛しています。離れる事は、考えたくないんです。お願いです、俺に支払えるものなら何だって支払います。両腕を潰されても、足を切られても、その人の側にいられる為なら構いません。残りの時間をその人の側で過ごせるなら、何でも差し出します」
これが、チェルルの覚悟だった。ハムレットの側にいたい。囚われるのではなく、ただ側に。彼は傷物でもいいと言ってくれた。それなら、怖くない。例え腕を取られても、一生歩けなくてももういいんだ。戦いは終わって、もう誰を殺める事もしなくていいんだから。
場が、静まった。シウスが悲痛そうな顔でこちらを見て、ギネスすらも目を見開いている。カールは驚きながらも悲しそうに、こちらを見ていた。
「お願いします」
深々と頭を下げた。その時、バンッと大きな音を立てて法廷の扉が開いた。
「そんな必要はないよ」
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