黒猫の決意(チェルル)

5/7
前へ
/60ページ
次へ
 声に、顔を上げた。そこにはハムレットが立っていて、側には見知らぬ男が縛られた状態で突き出される。それを見たギネスは明らかに狼狽した様子をみせた。 「その男がこの裁判を起こした本当の理由は、罪人の罪を問う為ではない。ヒッテルスバッハへの縁が深い者をダシに、当家に裏取引を持ちかける為に声高に訴えているに過ぎません」 「そんな事はございません!」 「では、この男が当家の商人達に何を交渉していたのか。当家にどんな取引をもちかけたのか、ここで特別な証人として話させましょうか」 「今はそんな事を問う場ではない!」 「いいや、関わりがある!」  ハムレットの強い声に場が大きく揺らぐ。彼は歩み寄り、裁判長とカールに一礼して書面を提出した。 「……これは、どういう事だ」  裁判長の鋭い視線がギネスを睨む。その間に、ハムレットは他の列席者にも同じ書面を配っていた。場が騒然として「まさか」とか「これは本当なのか」という疑念の声が沸いた。 「裁判を取り下げて欲しければ、ジェームダルとの取引を辞退しろ。さもなくば彼の国のテロリストを極刑に追いやってやる。そう言ってヒッテルスバッハ家へ圧力をかけたとあるが?」 「でたらめです!」 「随分、財産をつぎ込んだようじゃの。損失が大きい。陛下、これが本当だとすればそこの者を取り調べる必要性が出てくる事になりますが」     
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

355人が本棚に入れています
本棚に追加