黒猫の決意(チェルル)

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「そう、だな。裁判を起こした理由がそもそも不純なものであったとすれば、罪を問われるのはどちらか、はっきりさせなければならない」  カールの言葉に、ギネスはビクリと震える。引き立てられた男は裁判所の役人が引っ張りあげて取調室へと連行されていった。そしてその場で、ギネスに対する家宅捜索も許可が下りたのだ。 「さて、チェルルの処分だが」  裁判長が腰を折られたと言わんばかりの様子で溜息をつく。チェルルはそれにビクリと体を震わせて視線を上げた。 「裁判については改めてやり直す事となるだろう。だが、牢を出る事を許可する。判決は……陛下、如何致しましょうか?」 「一週間後くらいでいいかな。私としては今後生まれる我が子の恩赦を早めに彼に与えてもいいと思っている。シウス、彼は信用できるかい?」 「勿論です。アルブレヒト王奪還は彼なくしては時間がかかった事でしょう。そればかりではない。ルースの乱で商人達の家族が囚われた際も、彼が動いてくれて無事に人質を解放できたからこそ、戦場への医薬品流通が戻りました。これによって多くの民と兵士が助かりました。この功績は忘れてはなりません。他にも東砦をターゲットにした水源汚染を阻止したのも、彼だと報告を受けております。十分な貢献かと」  それらの調書は既に裁判官の手元にあるようで、彼も深く頷いた。     
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