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「え?」
少し驚いて見ていると、黒い瞳が強情な光を宿してそこにあった。
「俺が先生を守る。絶対に誰にも傷つけさせない。俺、先生がいないと死んじゃうんだよ」
「猫くん……」
「いいでしょ? 俺、ただの家猫じゃないんだから。先生を守ったり、できるんだから」
ギュッと握られた手が思いの強さを物語っている。
瞳を閉じて、ハムレットは頷いた。
「僕も同じだよ。君を失ったら僕は何を糧に生きていけばいいのか、きっと分からない。ぽっかり穴が開いて、動けなくなる。だから、これはお願い。無理はさせないからね」
「うん」
手を伸ばしたら、側に擦り寄ってくる。黒い髪を撫でて思うのは、早く家に戻りたいという何でもない日常を願う気持ちだった。
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