ほんの僅かな逢瀬でも(ハムレット)

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ほんの僅かな逢瀬でも(ハムレット)

 クラウルの予想は見事に当たった。裁判は早まり、その一日前の夜にチェルルとの面会が叶った。警備の近衛府と、裁判所の役人が同行する事になったけれど、それでも彼に会えるのは嬉しい。  地下牢はとても無機質で、少し肌寒い。その中でも手前に、彼は簡易ベッドに腰を下ろしていて、ハムレットを見ると驚いた顔で駆け寄って来た。 「先生! どうして……」  戸惑いながらも嬉しそうにするチェルルの目には薄ら涙がある。それでも健気に笑う姿が、酷く胸に痛くて苦しい。邪魔な格子から腕を差し入れて抱きしめたハムレットは、こみ上げるような衝動にどうにもならず涙が出そうになった。 「先生、力強い!」 「猫くん……」 「うわぁ! 先生泣かないでよ」 「気のせいだよ」  終戦を聞いて、会えると思っていた。何かしらあるのは覚悟していたけれど、こんなに突然、一目会うこともできないまま離されるなんて思っていなかった。抱きしめて、無事を確認して、甘やかす一夜くらいあると思っていたのだ。 「チェルル……」  耳元で囁いて、手や体で体温を感じて。  そうするうちに背に控えめな手が触れた。 「大丈夫、絶対に戻るから。信じて、待っててよ」 「うん」     
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