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闇に生きる(ハムレット)
実家から馬車を走らせ、ハムレットが向かったのは王都の外れ。そこにある屋敷に用事があった。
「あら、お珍しい客人だわね」
「ブラック、取引だ」
「あらあら、性急。なにか……」
「ブラック、二度は言わない。僕の求める情報をよこせ」
出迎えた情報屋、シン・ブラックは暗いぶっ飛んだ目をしているハムレットを見て目を丸くし、次には鋭い目を向けた。
「こっちよ。ユアン、ハーブティでも出して頂戴。今日はもう店じまいよ」
奥にいる側近のユアンも驚きながらバタバタ動き出す。屋敷に鍵をかけ、気持ちの落ち着くハーブティをハムレットに出した。
だがハムレットの気配は決して緩む事はない。暗い闇を映すような瞳と底冷えするような冷気を感じて、二人はどうしたものかと怯えていた。
「ギネス大臣がうちに手を出している。詳しい情報が欲しい」
「ギネス? あぁ、確かジェームダルとのスパイスの取引に割り込もうとしたんだっけ。でも、そこは既にヒッテルスバッハの領域だからね。交渉自体が上手くいってないみたい。直接取引をしている商人の買収もしようとしたらしいけれど、バカよね」
「僕と、僕の大事な飼い猫の事をどこで知った」
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