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いや信じなくては、教師なんて続けられない。そこをゴールにして、生徒たちにゴールテープを切らせてやりたい。
心からそう思っていた。
「タケチ、うざかったね」
帰り道、唯がポツリと言った言葉は、誰もが感じていたこと。もちろん茜も同じ気持ちだった。
でも、クラスの数名はあの演説に燃えたのかもしれない。
「なんでこんな学校入っちゃったんだろ、受験受験って。中学で必死に勉強してさあ」
石ころもないアスファルトの道を唯は軽く蹴る真似をする。
「Aクラスに入れなきゃ人生終わりみたいな言い方、ムカつくよね」
隣を歩く唯の方は見ずに、茜も呟いた。
「まあ、私たちには関係ないな。Aクラスなんて。せめてCに落ちないようにしなきゃね」
(ああそうか、唯はそんな風に思ってたんだ)
茜は少し可笑しかった。結局、そういうことにこだわっているんだ、唯も。そう思っていた。
高校二年で将来の夢を考えている人なんて、いったいどれだけいるんだろう。
茜自身、そんなことはわからない。
「今日、塾?」
茜の質問に、唯は頷く。
「茜も?」
「冬季講習始まる」
そう答えながら、自分もなにも変わらないと思っている。
ウザいタケチの演説。でもそれに逆らったところで、前は見えない。
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