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「それじゃこのデザインの意味がないでしょ?!はみ出したカードなんか見たことある?」
最初の男性の声に胡座の女性の声が被さる。
「たしかにそこは押さえよう。朝までにはまだ時間あるんだから」
「また徹夜かよ~」
二人の男性の声が重なりながら響いた。
その時、胡座をかいていた女性が立ち上がり、組み立てられていた紙の部分にカッターナイフを入れて切り取ってしまった。
「いい加減なもん作れない。学校の名前背負ってんだよ」
怒鳴り声ではなかった。
「一度休憩しよう。チコ、バランス計算し直して、圭、そこ入れるのに小さくなるのはダメだろ?」
「もちろんダメ!」
「どっかずれてんだよ、最初の設計図から。そこからな。俺、コーヒー買ってくるわ、おまえらも普通のでいいな」
穏やかな声の男性が、バッグから財布を出して、自分の方に近づいてくることに気づいて茜はその場所を離れた。
電車に乗りながら、茜はドキドキしていた。
なんだったんだろう、あんなショップもない場所に、どうしてあんなオブジェが作られているんだろう。
冬季講習で間違えた問題を電車の中で見直すつもりだったのに、そんなことは忘れていた。
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