彼女の病が治りませんように

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彼女の病が治りませんように

 彼女は太陽のように眩しく、いじくらしい存在だった。  おっと、『いじくらしい』は、方言だった。  かといって標準語の『鬱陶(うっとう)しい』では、私の感情とは噛み合わせが悪く、いまいちしっくりこない。  九州だと『しゃあしい』、広島だと『たいぎい』かな。だけれども、どれも少しずつニュアンスがずれている。  やはり、私の心情を適切に表現しているのは、『いじくらしい』なのだろう。  いきなり脱線したので、話を元に戻そう。そう、彼女についてだ。  彼女は何をするにでもクラスの中心で、生まれ持つ、品良く整った顔立ちを、時折惜しみも無く歪ませては、天真爛漫に笑う。声量こそあるが、その笑い声も決して下品なものでは無く、誰の耳にも快い、透き通る春風のような爽やかさがあった。男女を問わず、みんなが彼女に惹かれている、そう思う。  私と言う例外を除けばだが。  私は彼女が苦手だ。嫌いとは言わないが、おおよそ価値観を共有できない人種だと、思わずにはいられない。  たとえ彼女が太陽だとしても、生きとし生けるもの全てが太陽を欲する訳じゃないさ。きっと私は日陰を好むタイプなのだろう、たとえば、そう、菌類とか。     
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