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「そんなことないよ。腑にオチてる、オチてる!」
この場は一旦引いて、後日だな…
「で、例の件は上手くいったのか?今日はそれで外出してたんだろ?」
「あ、あれはうん。請求取り下げで終わった」
移動中に三津原から電話があった。「請求取り下げ」と素っ気なく告げられ、通話は切れた。
互いに上村のことを口にすることはなかった。できなかった、というのが正解かもしれないけど、保険会社から支払うものがない以上、一担当者としてはここまでだ。
「月島さん!月島さんはいつ戻ってくるんですか?」
突然覚醒した田神が背後から月島に抱き着き、大木を揺らすように月島の身体を揺らす。
「田神、寝るか気絶するかどっちかにしとけよ!」
月島は振り向き様に田神の後頭部を容赦なく叩く。が、田神はタフだ。そんなことでへこたれない。
「月島さん、戻ってきたらロック朗さんに会いにいきましょうよ!」
満面の笑みでさらに月島に絡みについていく。
「めんどくせぇな」と振り払う月島を無視して、今度は私に手を伸ばしてきた。
「晴さん、晴さん!報告が遅くなりました。ロック朗さん、今日、退院しました」
「良かった!!」
被害者が怪我から回復し、退院してくれることは何より嬉しい。
これでようやくスタートラインだ。でも今回はその前段階で田神が頑張った。だから示談まで早い気がする。
「来週には仕事復帰されるそうでCM撮影の見学のお誘いもいただきました。だから月島さんも一緒に行きましょ!!」
と言って、田神はまた神社の綱に付いたガラガラを鳴らすみたいに月島の身体を前後左右に振り回す。
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