第1章

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薄暗いカウンターには、若い男女が静かにカクテルを飲みながら談笑している。 奥にあるトイレでは常連の木下さんが閉じこもってしまっていた。 ワイングラスを拭くマスターの横で、 僕は洗い物を片付けていた。 薄暗いオレンジ色のライトに照らされた店内は、 大人びていて、20歳になった僕には少し背伸びをし過ぎたと感じる。 「ほんと、うちに来てくれて助かるよ。 最近この辺人口が増えただろう。都市化がどんどん進んでさ。1人じゃどうもお客さん待たしちゃうからさ。ゆくゆくは、お酒もお願いすると思うから、よろしくね。」 孤立していた僕の心に気づいたのか、マスターは優しく声を掛けてくれる。 「ありがとうございます。僕もバイト先探してて、駅近いところって知り合いくるんで、こーゆー隠れ家的なとこ探してたのでちょうど良かったんです。」 マスターは少しだけ微笑むと、木下さんの介抱頼むよ。と言った。 30代前半とは思えないほどの貫禄と、落ちついた声。 黒髪をオールバックにしていると尚更、近寄りがたい雰囲気を纏っている。 僕はトイレの外から、木下さんに呼び掛ける。 「木下さん、大丈夫ですか?」 image=512636071.jpg
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