3人が本棚に入れています
本棚に追加
薄暗いカウンターには、若い男女が静かにカクテルを飲みながら談笑している。
奥にあるトイレでは常連の木下さんが閉じこもってしまっていた。
ワイングラスを拭くマスターの横で、
僕は洗い物を片付けていた。
薄暗いオレンジ色のライトに照らされた店内は、
大人びていて、20歳になった僕には少し背伸びをし過ぎたと感じる。
「ほんと、うちに来てくれて助かるよ。
最近この辺人口が増えただろう。都市化がどんどん進んでさ。1人じゃどうもお客さん待たしちゃうからさ。ゆくゆくは、お酒もお願いすると思うから、よろしくね。」
孤立していた僕の心に気づいたのか、マスターは優しく声を掛けてくれる。
「ありがとうございます。僕もバイト先探してて、駅近いところって知り合いくるんで、こーゆー隠れ家的なとこ探してたのでちょうど良かったんです。」
マスターは少しだけ微笑むと、木下さんの介抱頼むよ。と言った。
30代前半とは思えないほどの貫禄と、落ちついた声。
黒髪をオールバックにしていると尚更、近寄りがたい雰囲気を纏っている。
僕はトイレの外から、木下さんに呼び掛ける。
「木下さん、大丈夫ですか?」
最初のコメントを投稿しよう!