3人が本棚に入れています
本棚に追加
「ううぅ、なんでだよ、かおるぅぅ。」
トイレの中からいつもの木下さんの独り言が聞こえる。
「木下さん!そろそろ開けてくれないとこっちから鍵開けちゃいますよ!木下さん!」
扉をノックしながら話しかける。
木下さんは独り言を喋ってる間は1人で帰れる余地がまだあるのだそう。
「俊輔ぇ、お前なんかにわかるもんか、俺の気持ちなんかぁ!」
トイレの中から言われても何も響かないのである。
「わかんないですよ。だから早く出て来てください。話、まだ途中だったでしょう。」
マスターは僕らのやり取りに笑みを浮かべている。
このバーで働き始めて2週間が経とうとしていた。
木下さんは毎日のようにやってくる。
仕事が休みの前日は決まってこうして酔いつぶれるのだ。
最初のコメントを投稿しよう!