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実は、嫁入り先自体は少し前から決まっていたらしい。ただ、先方の迎え入れ準備に時間を要したため、連絡が今になったのだそうだ。
曰く、少女を買う権利を得たどこぞの金持ちは、稀少な白無垢を生きたまま囲おうと、屋敷の離れに一室、白を穢さないための大きな白い部屋を用意したのだという。
もしも少女が死にそうになった暁には、また金を払ってこの組織で色褪せないように加工してもらい、今度は剥製として家に飾りたいという意向なのだと、上司はいつものように淡々と説明した。
自分も同じように、淡々と少女の状態を報告する。恐らくはもう明日、明後日には嫁入り時を迎えるだろうと伝えれば、上司は丁度良いと機嫌良く笑い、明日引き渡す約束になっているのだと言った。
急な話だが、判りきっていたことだったからか、あまり衝撃はなかった。ただ、ああ、もうなのかと、ひたひたと心を埋めていく何かがあった。
何とも言えない気持ちを抱えて少女にこの話を伝えると、彼女は少し驚いた後、判りましたと頷いた。
「私を買った人、どんな人なのかなぁ」
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