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判らないが、少なくとも、乱暴をされることはないはずだ。大金を払って買った美を損ねるような真似はしないだろう。
そう言うと、少女はそうだと良いなと笑った。いつものように、不安のひとつも滲ませずに微笑む。それが強がりでもなんでもないことは知っている。彼女は本気で、心から己の運命を受け入れている。自身が他に望まれ、それに応えられることを、喜んでいるのだから。
嫌だな、と思った。そう思った自分に遅れて気が付いて、驚き、すぐに納得する。胸を浸していくものは、悲しみだ。そしてそれに気付いてしまったことで、もっと悲しくなった。
悲しいと思っているのは自分だけだと判ってしまったから。
だから、多分、そう、何かを残したかったのだと思う。
彼女に。何でもいいから、何かを。
それだけで何か報われるような気がした。実際何がどう報われるのかまでは、判らなかったけれど。
そんな思いで、こうして夜更けに白い部屋を訪れたのだ。
いつも通り白い衣装を身に纏って扉を開ければ、少女はベッドの上で身体を起こしていた。もう遅い時間で、いつもなら寝ているはずだが、きっと緊張で眠れなかったのだろう。
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