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 そっと電気を付けると、白く美しい姿が光に照らされる。未だにこちらに気付かない彼女に近付けば、その輝かんばかりの美しさがより一層伝わるようだった。  昼間にはまだ黒の見えた彼女の髪も、今は、一片の混じりもない白になっている。見立て通りだ。  嫁入り時である。  ぼんやりとしている少女に、そっと声をかけた。 「ひぁっ! ……あ、ああ、あなたか、びっくりした……。こんな夜中に、どうしたんですか?」  至近距離からの声に肩を跳ねさせた彼女は、けれど声の主が自分であることに気付き、すぐに柔らかい笑みを浮かべた。  それを見ていると、自然と自分も笑うようになっていた。  彼女は綺麗だ。見た目以上に、何よりも魂が、心が美しい。彼女の中身は、正に白く無垢な美しさを湛えている。  だからきっと、受け入れてくれると信じていた。  動かずに前を見ていて欲しい、と言うと、少女は首を傾げた。それはそうだ。前を見るも何も、目隠しをしている彼女には何も見えないのだから。けれど彼女は、大人しく従ってくれた。  そんな彼女の後ろ頭に手を伸ばす。後頭部のところにある鍵穴に鍵を挿して回せば、かちん、と軽い音を立てて目隠しがずれ、落ちた。  ――白、だ。     
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