16/18
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
 瞳も何もかも美しい白となった目が、驚き見開かれ、こちらを見つめている。それを真正面から見つめ返し、何にも覆われない少女の美しさに見入った。  しかしその白は、端の方からじわりと侵食され、瞬く間に赤へと染まり切ってしまった。  よく見慣れた色だ。鏡で毎日のように見る、自分の目と同じ色。  もう二度と移ろわぬ赤が、少女の瞳を鮮やかに染めた。  何が起きたのか判らないという顔で、少女は呆然としている。目的を果たし、顔を離したところで、彼女はようやく理解したらしい。白い顔から驚きが収束し、段々と落ち着いていくのが判る。鏡などないため、彼女自身が見ることは叶わないが、その目がどうなったのかは察しただろう。  少女の視線がこちらへ向けられる。赤い瞳が見つめ合う。  怒るだろうか。悲しむだろうか。はたまた拒絶が来るだろうか。  果たして、 「……あなたって、そんな顔だったんですね」  困り顔で、けれど確かに微笑みながら、少女がそう言った。そこに怒りや悲しみはなく、ただ、こちらを案じる心が垣間見える。そこにほんの僅か、喜びが見えた気がしたのは、流石に願望だろうか。  判っていて、けれどやはり、安心した。  ゆるされたのだ。 「あの、怒られないようにだけ、気を付けてくださいね」     
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!