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白一色に染まった狭い部屋は、何度見ても閉塞感で息が詰まる。
白無垢の売買を専門とする組織の施設内にあるこの部屋は、白以外に染まる白無垢を染めないために用意された、白無垢専用の部屋だ。
そして自分は、白無垢の世話役として組織に飼われている。
嫁入り時を迎えた純白の白無垢は、混じりけのない白にのみ染まった存在で、この状態の白無垢は最も価値が高い。
だが残念なことに、白無垢は大元の売り手――大概はその親だ――の手を離れる時点で、既にいくつかの色に侵されていることが殆どだ。
というのも、大抵の場合、嫁入り時を迎えてすぐに、売られるのを拒もうとした白無垢が、自ら他の色に染まってしまうのである。
白無垢を殺せば、他の色に染まるという現象を食い止めることができるが、白無垢の白は死ぬとくすんでしまい、値がかなり落ちるため、その手段を取る者はあまりいない。
また、よしんば生きた状態の白一色の白無垢が手に入ったとしても、この状態の白無垢は簡単に他の色に染まってしまうため、純白を保つのは非常に困難だ。故に、純白の白無垢を売ることは、殆ど不可能に近い。
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