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 そこで介入するのが、自分が属しているこの組織である。組織はなんでも、唯一、白無垢の白をその死後も保つ技術を有しているそうで、買い手が後を絶たないらしいのだ。  だが実のところ、自分はあまり詳しく組織について知っているわけではない。なんと言っても自分は組織の下っ端だ。組織について知っているのは、仕事上必要のある情報と、上司の話から窺えた少しの事実だけだった。  だが、それで困ったことはない。自分に課せられているのは、この白い檻の整備と、仕入れから出荷までの間の白無垢の世話をすることだけなのだから。  いつも通り、部屋の前で服装の点検をする。白無垢がいない今は必要のない行為だが、意識付けることが大切なのだ。白い面と、白一色の上下、白い靴に、白い手袋。  そして部屋に入ってまず、掃除に取り掛かる。昔と違い、部屋と同化していくような変な気分になることこそなくなったが、それでも、窓ひとつない白に圧迫されるような閉塞感は拭えなかった。  自分の日常はこんな風に、掃除と洗濯と、白い部屋の設備の点検で過ぎていく。耳に挟んだ話だと、ここ以外にも同じような施設が、いくつか存在するらしい。だが、長らくこの施設の外に出たことがない身では、いまいちピンと来なかった。     
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