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 溜息を飲み込んで、代わりに必要なことを手短に伝える。足首を捕らえる鎖は短いから、食事等は全て自分が運び、場合によっては食べさせること。トイレは向かって左の壁沿いにドアがあるが、使用する際に説明するので声をかけること。娯楽の類は許可が出ることもあるが基本諦めること。直接管理に携わるのは殆ど自分だけであり、用事があれば枕元のボタンで呼び出せること。それから最も重要な事として、ここに来た以上は何をしても逃げられないので、出来るだけ大人しくしていること。  この伝達事項を伝えると、大概は激昂される。だから面倒臭くて、あまり好きではないのだが。 「あ、はい。わかりました」  しかしこの白無垢はひとつ頷いて、ただそれだけで済ませてしまった。  なんなんだ、と思わず言いそうになり、面の下で唇を噛む。無駄口は必要ない。 「あの、お世話してくれるんですよね? 娯楽品は目隠しがあるので要らないですけど、代わりに時間がある時はお話に付き合ってくれませんか?」  そう言って白無垢はちょこりと首を傾げた。自分も今度は溜め息を呑み込まず、盛大に吐き出して無視した。
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