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そんな出会いを果たした白無垢は、なかなか嫁入り時を迎えない。滞在期間も他に例を見ないほどに長くなり、いくら無視しても毎日めげずに話しかけて来る白無垢に、とうとうこちらが根負けした。
とはいえ大した話をする訳でもない。自分は学がないから話せることは少ないし、話したいこともない。白無垢だとて、部屋に閉じ込められっぱなしでは話題も何もないだろうに、好きな食べ物やら白無垢になる前の生活やらと、話が尽きる様子はなかった。
自分が請われて話すことは外の天気くらいで、それでも白無垢は楽しそうにしている。こんなやり取りが片手の指では数えられなくなった頃、ついに耐え切れず自分は問うてしまった。どういうつもりだと。何故笑っていられるのかと。
奇病に罹り、物として扱われ、売り飛ばされる。全く以て理不尽だ。それが何故平常でいられる。
言ってしまってから口が滑ったと思ったが、もう遅い。ぽかんと惚けたような白無垢に、居心地の悪さから目を逸らしたところで、白無垢が口を開いた。
「私、感謝しているんです」
この病気について、と言う白無垢の口調は真っ直ぐで、そこに嘘があるようには見えない。
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