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 白色病(はくしきびょう)、という奇病がある。  罹患すると徐々に色を失い、全身が白に染まるという病で、この白色病患者のことを『白無垢』と呼ぶ。  どうして白無垢と呼ぶのかというと、女性にしか発症しない上、白に染まりきった後の罹患者が何かの色に触れると、触れた部分がその色に染まるからだ。そしてこの状態のことを、『嫁入り時』と呼ぶ。あなた色に染まる、という意味と掛けているらしい。  さて、この病だが、色素を失う影響で紫外線に弱くはなるが、それは他の色に染まりさえすれば解消されるし、重篤な合併症などもないので、健康被害はほとんどない。  しかし、白色病に疾患した女性は皆、恐怖に怯えることになる。その理由は単純だ。  白無垢は、高く売れるのである。  肌も、髪も、瞳も。嫁入り時以降、何色にも侵されずに純白が保たれた部位は、その美しさと珍しさから、非常に高い値がつく。  特に白無垢の瞳は、物理的に触れた色ではなく、嫁入り時になってから最初に見た色に染まるという特殊性から、一際高い値段でやり取りされていた。  そんな、嫁入り時を迎えればどんな色にでも染まってしまう白無垢だが、ひとつだけ例外となる色があった。  白だ。  白無垢が染まるのは白以外の色だけで、白に触れた部位が白に固定されることはない。  だからこそ、こんな部屋(おり)が作られたのだ。
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