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バッグを持つ指先が冷たい。風が吹くと、制服のスカートが揺れて太ももが痛いくらいに寒さを感じる。
女子高生って、無理してるよねぇ……とミツネはいつも思う。しかし、タイツを履くよりはみんなと同じ、短めのスカートにハイソックスのほうが無難だと考えてしまう。……そんな、個性のない自分、勇気のない自分も、嫌だった。
小走りに庭を突っ切って門を開けたミツネは、ふと立ち止まった。
「あれ? もう満開……?」
門の脇に、ミツネの祖母が大切に育てている白菊のプランターがある。
その菊の花が全部、つぼみから満開へと真っ白に咲いていたのだ。
「昨日までは、まだまだつぼみだと思ってたのに……」
驚いた。ミツネはそっと白菊の花びらに触れてみた。
すると、
「わっ……冷た!」
冷たいし、硬い。意外な感触に、ミツネは指を引っ込めた。
白菊の花びらだと思ったそれは、霜だったのだ。
「なんだ、霜か……」
菊のつぼみや葉っぱに霜がおりると、花びらのように細長い形になって、まるで花が咲いたかのように見えるのだ。近くで見れば判別がつくが、遠目だと花なのか霜なのかわからない。
ミツネはもう一度、白菊の花びら……否、白菊のつぼみにおりた霜に指を触れた。
白い花びらは、みるみるうちに溶けてなくなってしまった。
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