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白菊と初霜
心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花
凡河内躬恒
ある日の朝。
ミツネは玄関先でフゥとため息をついた。靴紐を結んだはいいが、そのまま上がり框にしゃがみこんでしまった。
そろそろ出かけないと、朝練に遅れてしまう。
部長は厳しい人だから遅れると叱られる。無断欠席すればそれこそ夕練でもネチネチ小言を言われるだろう。
でも……今日は部活に打ち込むなんて気分じゃない。
学校にも行きたくない。
「もう……どうしたらいいかわかんないことばっかり」
ミツネは膝に抱えていたバッグに顔を突っ伏した。
友だちのこと、成績のこと、恋のこと……。悩みは山積みだ。たまに、部活にも学校にも行きたくないくらい嫌になってしまう朝もある。
でも……こんなことしててもしょうがない。
「はぁ。学校、行くか……」
ため息をつきながら立ち上がり、玄関の戸を開けた。ガラガラガラと大きな音がする。
古い家。
私にも古いにおいがしみついてるみたいで、やんなっちゃう。
ミツネは大きく鼻をすすった。
「はぁ、寒……」
吐く息が白い。
「もう、冬かぁ……」
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