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「そんなに俺の事嫌い?増山は、俺と二人きりは嫌?」
溜め息混じりに彼が問う。
「え?」
思わず彼と目が合って、私は慌てて背けた。
いやいや、二人きりが嫌なのはあなたの方でしょう?
なのに、そんな言い方今更狡い。
漸く諦めようと決めたのに、まさかの本人が再び私をホワイトアウトへと誘い込むのか。
「いや、そんな、嫌とかそういうんじゃなくって、ですね。西尾くんの為を思って。これ以上迷惑掛けるのは心苦しいので」
お互いの心の平和の為に、と私はあなたの事を思って。
「じゃあ、問題無い。別に俺迷惑じゃないし。それにまた遭難して、それを助けに行く方が面倒だろ?」
「や、だから大丈夫です。今日はもう滑らないから……」
「いや、二度ある事は三度あるってよく言うし。今回は大丈夫でも次またどこかで……ぁ」
最後の「ぁ」を言って、まずいと口元を抑えた彼の顔がみるみる赤くなる。
「悪い、今の忘れて」
彼が慌てて踵を返す。
「分かった。今日はこれで解散な」
私の方など一切見ないでそそくさと去ろうとする彼の袖を掴んだ。
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