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ホワイトアウト
吹雪で視界が白一色。
自分がどこを向いているのかも分からない。
ーーホワイトアウトーー
今の私がそれだった。
「……どうしよう」
不安な気持ちを抑えきれずに声が漏れた。
こんな事になるなら、断れば良かった。
会社の社員旅行で訪れたスキー場。
幼い頃、大小異なるスキー場が幾つもある街に住んでいた。
でも運動全般が苦手だった私は勿論スキーも苦手。
家族で何度か行った他は小学校の授業で数える程度。
そんなだから、会社の同期数名に誘われていざ滑ろうとしてもすぐに転ぶ。
居た堪れずに先に行っていて、と彼女達と行動を別にしたのが運の尽き。
それからすぐに天気が急変。
あっという間に雪に覆われ、私は身動きが取れなくなった。
とはいえスキー場内だから、さすがに遭難とまではいかないだろう。
すぐにやんでくれる事を願いながらその場に座り込んでいた。
「ハァ」
溜め息が意図せず出る。
不意に心の中に浮かんだその人を想ってまた溜め息一つ。
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