ホワイトアウト

11/12
前へ
/12ページ
次へ
「そんなに俺の事嫌い?増山は、俺と二人きりは嫌?」 溜め息混じりに彼が問う。 「え?」 思わず彼と目が合って、私は慌てて背けた。 いやいや、二人きりが嫌なのはあなたの方でしょう? なのに、そんな言い方今更狡い。 漸く諦めようと決めたのに、まさかの本人が再び私をホワイトアウトへと誘い込むのか。 「いや、そんな、嫌とかそういうんじゃなくって、ですね。西尾くんの為を思って。これ以上迷惑掛けるのは心苦しいので」 お互いの心の平和の為に、と私はあなたの事を思って。 「じゃあ、問題無い。別に俺迷惑じゃないし。それにまた遭難して、それを助けに行く方が面倒だろ?」 「や、だから大丈夫です。今日はもう滑らないから……」 「いや、二度ある事は三度あるってよく言うし。今回は大丈夫でも次またどこかで……ぁ」 最後の「ぁ」を言って、まずいと口元を抑えた彼の顔がみるみる赤くなる。 「悪い、今の忘れて」 彼が慌てて踵を返す。 「分かった。今日はこれで解散な」 私の方など一切見ないでそそくさと去ろうとする彼の袖を掴んだ。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加