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「……どうして」
ここに居るの?という声が雪に消される。
「ひどい雪だな。立てるか?」
私を気遣っている言葉なのに、手を差し伸べたその顔はしかめっ面。
「すみません」
私の声が緊張で満ちていく。
「下手くそがこんな天気に滑るなよ。山田達が心配してたぞ」
ため息混じりに彼が言う。
その声のトーンの冷たさに私の心もヒンヤリと凍り始めていく。
「……すみません。さっきまでは天気だったんですが」
「取り敢えず下まで滑るぞ。俺の後ろ付いて来い」
「……はい」
返事を聞く前に彼は先に滑り出し、私の声は彼に届く前に雪に消されていった。
「ハア」
漏れ出たため息は、あっという間に雪と共に何処かへと舞っていった。
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