48人が本棚に入れています
本棚に追加
「あれ見ろよ。もうすぐ着くぞ、良かったな」
彼が滑りをとめて指を差した方向に、うっすらと建物が見えた。
辺りは既に暗くなり始め、その建物がオレンジ色のライトに照らされている。
漸く私は安堵の息を吐いた。
「良かった……」
「一つ、貸しだからな」
「はい……すみません、本当に……」
ほら、また。
彼は私の言葉も聞かずに、颯爽と飛び出していった。
もう、あの優しかった彼は居ない。
だから、早く諦めるべきなんだ。
雪の振り方が弱まり、進むべき道が決まった。
それと同じように、私の恋の行方も行く先を定める時が来た。
意を決して、滑り始める。
あの、センターハウスに着いたら……。
私は、この恋をきっぱりと諦める。
最初のコメントを投稿しよう!