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「……はい。今度からは気を付けます」
やっぱりダメだ。
私の心がヒリヒリと痛い。
「全くだ。下手なんだから一人で滑るとかマジねぇわ」
「……ごめんなさい。反省してます。だから明日は部屋で……」
「だから明日は特訓だ」
「え?や、いえ、あの、明日は部屋で一日籠ってま……」
「は?スキー場来てんだから滑るに決まってんだろ?リフト券だってもったいないし。俺がみっちり教えてやる」
「そんな、それじゃ西尾くんに悪いです。私なんかに付き合わせたら西尾くんが楽しめないじゃないですか。そんなの申し訳ないです」
「また遭難騒ぎとかの方が迷惑だろ」
「だから、もう滑りません」
「いいから、分かったな。第一リフト乗り場に明日朝九時集合。時間厳守な」
有無を言わせずビシッと私を指差すと、彼は再び歩き出した。
「えっちょっと待ってください!西尾くん!?」
私の言葉などお構い無しに遠のいていく後ろ姿。
「そんなぁ……」
彼の背を見送りながら佇む。
どうして私にだけ、いつもそんな態度。
目の奥に熱を帯びる。
熱い液体が今にも決壊しそうなのを何とか持ち堪えた。
悔しさに歯をくいしばる。
私の事嫌いなら、別に無理してそんな練習付き合ってくれなくても良いのに……。
悔しさとか、惨めさとか、そんなドロドロした感情が私の足元を漂う。
「もう諦めるから、泣かない……」
そう決めたんだ。
「諦めるから……」
決意を固めるようにもう一度呟いたけれど、瞬きしたら雫が落ちた。
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