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雪が降っている。
今日は君との待ち合わせ。
僕は駅へと急いでいる。
去年の春、一人暮らしを始めた僕の住むアパートから最寄駅へは徒歩10分。君が此処へ来るのは二週間ぶりだ。
幼馴染みで僕の家の三軒隣に住んでいた君とは、前はほとんど毎日会えていたんだけど。今では電車で一時間ぐらい離れてしまったから、流石にそれは難しい。
すっかり見慣れた街並みは、いつもと同じ顔をして僕の目の前に広がっている。
だけど、冬の冷たい空気に満たされて、いつもより少しだけ光っても見えた。
そう言えば昨夜の電話で、しばらくの間、親戚の慶事だと、生まれた国まで出かけていた君のお父さんが、無事に帰ってきたと言っていたっけ。お土産があるから近々取りに来いとも言われたから、暇を見つけて帰らないと。
と、言うか、今日来るんだから持ってきてくれたらいいのに、なんて言ったらきっと君は、なんで私が、って憮然として嫌がるんだろうな。
そんななんでもない想像をしながら、頭の中を愚痴やら呆れやらで満たして足を動かす僕の視線の先に、ようやく表れたのは、珍しく待ち合わせより早く駅に着いていたらしい君の横顔。
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