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……まあ、真白みたいなのが『世渡り上手』で、私みたいなのが『世渡り下手』なのは、わかっているけど。
「でも彩ちゃんのそういうところ、ぼく好きだよ?」
真白が手を伸ばして頬に触れてくる。
透き通るような白い肌だ。爪もきれいに切りそろえられていて、お人形さんみたい。
お人形さんみたいにお世話されて、『天使みたいな子』の顔をして。
にこにこと笑っているのが真白だ。その顔を私に見せないのが真白だ。
「だって彩ちゃんが言ったんだよ。彩ちゃんだけが気付いたんだよ。だからぼくにとって彩ちゃんは『特別』なの」
いつかの昔、お人形さんみたいに笑い続ける真白に言った言葉が、わたしを真白の『特別』にした。
「彩ちゃん、だーいすき」
蕩けるような声で、真白が囁く。
その『特別』な響きに、心臓の音が速くなることなんて、知りたくなかった。
『わたしだけが知っている』ことに、心の奥から染み出る感情があるなんて、知りたくなかった。
――それはきっと、いつかわたしの心を黒くするから。
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