七色の世界を知らない君は

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私が生まれたのは、真っ白い雪に朝日が反射する眩しい朝だった。 「わぁ、白くて小さくて可愛い!」 私を生んだ二十代半ばと思しき若い女の子は、私を見つめると朝日に負けないくらいの眩しい笑顔で笑いかけてきた。 「あれ、そういえば雪の日って、雨上がりみたいに虹が見えないんだね?」 ふとしたように、彼女は隣にいる少し年上らしき男性の方へ向き直って尋ねた。 「知らないの? 雪は雨と違って粒が複雑な形をしているから、光が乱反射しちゃって虹ができないんだよ」 「え、そうなの?? 蒼君博識だねー……この子に見せてあげたかったな」 そう言って少し憂いのある顔をしたが、すぐにまた眩しい笑顔で私に語りかけた。 「いつか、虹が見れる日がくると良いね」 「美奈! あんまり外にいると風邪引くぞ!」 「あ、待って!」 美奈……私の生みの親は私にまたね、と言うと、『そう』と呼ばれる男性の元へ駆けていった。
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