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「いただきます」
そう言って私は、自分の人生に覚悟を決めた。
オーロラ通。この通りがそう名付けられたのはごく普通な理由だ。シルクのように滑らかで、夜空に線を描くオーロラのように美しい造形を模しているからだという。
この通は、いつも人で賑わっている。けれども空気は穏やかで、争いごとや事件など起きる気配を感じない、平穏な場所だ。
だから、通りに面しているこの店でも、同じく穏やかな時間を過ごせると、誰もが思い立ち寄る。
重厚感のある扉は見た目ほど重くない。アンティークを取り入れた取っ手を少し押せば、ゆっくりと開き、思わず鼻をすん、と鳴らしたくなる心地よい香りが香ってくる。
扉の鈴がちりん、と音を立てたのを合図に、どこからともなく客を迎える店員の声が聞こえてくる。いつものように、店員に案内される間もなく、自ら窓際の二人席に腰を下ろした。
席に運ばれてきたお絞りで手を拭き、同じく運ばれてきた冷で乾いた喉を潤す。そのころを目掛けて声をかけてくる店員に注文を伝え、品が運ばれてくるまでの時間ゆっくりと過ごす。
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