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突然の手紙に不信感を抱いていらっしゃるかと思います。しかし、このご案内は貴方様にも得のある事柄であると私は思います。 是非、下記の日時に当店までお越しください。私の出す料理を完食いただけた暁には、貴方様の欲している情報が見つかるかもしれません。 では、当日を楽しみにお待ちしております。   オーナー 柘植』 最後の文章に飛びついた。それはつまり、彼が麻薬の密売をしているという決定的な証拠を、彼本人が晒すという事だ。ここまで挑発的な行動を起こしておきながら、嘘で終わらせるような男でない事は長年カフェに通い、彼を観察し続けわかっている。 これまでは、彼の完璧すぎる隠蔽に完敗してきた。何度苦汁を舐めて来たかわからない。けれど、今度こそ、終わりを告げられる。そんな予感がした。 日時を確認し、運命の日が来るのを待った。 そして今日、ここへやってきた。丁度、一週間が過ぎた頃だった。決定的な証拠が掴める、そう確信していた為に、あえてこの一週間は自分から店に出向くことはしなかった。 「いらっしゃいませ」 そう言っていつものように、カウンターの奥で迎えた彼の顔は、いつもと同じく穏やかだ。けれどいつもと店の雰囲気が違う。     
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