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原因はすぐにわかった。いつもなら閉店間際までちらほらと見受けることのできる客の影はおろか、店員の姿さえも見えない。今は午後の七時。紺色に色づいた空、オーロラ通を飾る照明がこの店をより一層美しく魅せる時間帯。 だというのに、妙に胸が騒いだ。 心地よい香りがふわりと香り、コポコポと心地よい音をカウンターの奥で奏でるのを目を閉じて、聞いていた。 「お待たせいたしました」  コトリ、と最後の皿が置かれると同時に掛けられた言葉に、大きく深呼吸をした。意図とせずに鼻を牽くつかせる香りに、脳が目の前に並べられた料理を欲した。  違う。決して気を抜いてはいけない。そもそも、料理を食べるだけで、長年、自分の首を飛ばしてまでも追い続けて来た真実を開示されるだなんて甘い話、ある筈がない。先程から感じていた恐怖と、不気味なまでにいつも通りな彼の笑顔にぞくり、と悪寒がした。  そして、一瞬で目が覚めるような“予感”が頭をよぎった。 「もしかして…まさか、でも…」 「はい。この中の“どれか”が、貴方様のお探しの品です」  的中して欲しくはなかったことだった。彼は、私に食べさせる料理の中に、“コカイン”を混ぜ込んだ。そして、今の発言が本当なのであれば、私はそれを、“己の舌”で当てなければならないと言う事だ。 「そんな事…多量摂取すれば死の可能性もある薬物です。私が死ねば、貴方は殺人容疑で補導されることになりますよ」     
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