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それでも私は、彼を逮捕すると決めた。その為に、この男に生涯をかけてきたのだ。 「いただきます」 これで、決着をつけさせてもらう。 まずはじめに手をつけたのはナポリタン。赤く色づいたパスタに雪のように積もる粉チーズに微量を混ぜていたとして、目視で判断するのは不可能だろう。いや、そもそもパスタに“あれ”を練りこんでいる可能性は?いや、流石にそれは考えすぎだ。パスタ専門店であるならば麺から作ることも頷けるが、あくまでここはカフェ。彼がそこまで手の込んだ…というか、わかりにくい事をするとは思えない。 フォークを持つ手が、僅かに震える。恐れる事は何も無い。彼は確かに私を弄んでいるが、嘘はつかない。仮にこのナポリタンにコカインを混ぜ込んでいたとして、それを食して死ぬなんて事は無いだろう。加えて、彼は聡明だ。私の志向の裏の裏を呼んで来るだろう。だからこそ、あえてわかりやすく仕掛けて来る。     
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