真っ白い半紙

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真っ白な紙。 何色にも侵食されておらず、穢れの無い、まさに雪色のような真っ白い半紙。 それが机の上に敷かれた敷布の上に寝そべっている。 その横には墨汁で満たされた硯と、綺麗に手入れされているが墨を吸ってしっとりとした灰色に染まった筆が置かれている。 私は計画的に動くのが苦手なタイプだ。 頭の中に思いついた事があれば、それらの良し悪しについて一切吟味しようとせず、それを善しとしてしまい、そのまま実現しようと猪突猛進するタイプでもある。 当然の帰結でもあるが、どのような形であれ、ふとしたはずみでアイディアが思いついたときは「これならイケる!」と思える事が多い。 しかし、いざ着手してみると、自分の熱意に対して結果がきちんと反映される事はほとんどなかった。 むしろ、アイディアを形にするための正しいやり方を知らないまま行動を起こそうとしていたのだから、何も思いつかないまま時間だけが無為に過ぎていく事の方が圧倒的に多かった。 物事を進めるために必要な、自分の力量に見合ったスケジュール管理の概念がきちんと理解出来てなかったのだ。 そのため、今年は「自分と周囲にとって有益な目標」を書き上げ、目につく場所に設置することで自分への戒めに出来るようにしようと思い立った。 思い立った時の興奮冷めやらぬ中、その足で物置へ赴き、棚の隅で埃をかぶっていた書道道具を引っ張り出して来たのだが……。
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