八頼 北より来し者と石壁

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「今回は来ないと思ってたで」  陽一の悪態に彼、は優雅に芝居がかったように現れた。 「今日までドラマの収録と聞いてましたけど?」  ケイがいつもよりも眼光を強めて彼を見ていた。 「あぁ、色々あったんよ。こっちんことも気になってたから帰ってきたんだ」  そう、俳優であり事務所長の真壁梨杏(まかべ りあん)は2人の視線など気にせずにゆっくりと近づいてきた。 「調子の良いときに出てきても、信頼度さがるだけやで」  辛らつな言葉を聞き、梨杏は仰々しくショックを受けたような仕草をしていた。  そこに誠実という言葉は見えてこない。 「アクターなら、もうちょい真実味のあることしぃや」  ジト眼になりながらケイが突っ込みを入れると、梨杏もやれやれと臭い演技をやめた。
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