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陽一の言葉に梨杏は甘い笑顔で返すが、中身を知っている陽一は吐き気を催しそうだった。
決して素顔を見せず、姿形を変える梨杏を陽一もケイも根っこでは信用していない。
とはいえ、彼は見た目ややることはあれだが、有能でありしっかりとした雇い主であることには違いなかった。
「それじゃあ、もうひと頑張りしてもらおうか」
朗らかに言いながら、彼はゆっくりと陽一を見る。
「彼女はどこだい?」
「今は……向かってんのは清水寺やな」
「ん? さっきいたのは二年坂じゃなかったのかい?」
「そうやな。近くにアジトでもあるんちゃうんかね」
陽一にとっては正直どうでもいい。
とっとと、このよそ者どもの関係ない仕事を終わらせたかった。
だが同時に、嫌な予感もしていた。
梨杏が動向する仕事はいつだってやっかいなものだからだ。
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