八頼 北より来し者と石壁

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 予想外。  十分に気をつけていたと思っていた。  彼女、フルドラは動く者もいない清水寺境内までやってきていた。  護衛としてつけてもらっていた二人、狼男の兄弟であるゴルドとアフラの気配は感じない。  今まで北欧から日本に来るまで、幾つかの難局を切り抜けられたのも二人のおかげだった。  このままでは、自身も無事では済まないだろう。  我知らず、体が震えだしていた。  とっくに生に対しての執着などなくなったと思っていたのに…… 「なにをしているのですか?」  唐突に声を掛けられ、フルドラは飛び上がりかけた。  振り返れば清水の舞台にある根元の柱から人影が現れた。
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