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「あれま、血の雨でも降りそうやな」
梨杏の軽口を言った瞬間、彼の目の前を火炎が通り過ぎていった。
少しずれていれば、彼は丸焦げだったろう。
「……いくで」
短く言うと陽一は踵を清水寺へと向けていた。
閉門されている清水寺を不謹慎にも乗り越え、三人は中へと入り込んだ。
不機嫌そうに陽一は先頭を歩いて行く。
清水の舞台。
そういえば、京都へ移ってからここへ来ることは今までなかった。
別段、文化財に興味があるわけでもなかった。
彼がここにいる理由は復讐のため。
運命を引き裂き、全てを狂わせた元凶の手がかりを得るために京都に来ている。
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