九頼 鬼は酒を所望する

15/16
前へ
/150ページ
次へ
 薄き緑の上着、俗に言う作業着を羽織った男だった。 「おい、マジかよ」  思わず陽一がそう漏らしてしまう。  ありえない。  ここに、この男が現れるなど誰も想像していないし、望んでいないはずだった。 「間に合ったみたいやな」  黒縁めがねを押し上げ、無造作に掻き上げただけの髪をゆっくりとなでた。 「それで、どうしたんや付喪神(つくもがみ)使い。えらい、調子悪そうやんけ」  彼はそう意地悪そうに嗤いながら言った。 「ちっ、やかましいわ。はよ、助けろや酒呑童子さまよ」 「応」  答えたと同時に彼は飛んだ。
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加