九頼 鬼は酒を所望する

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 まっすぐにスタロへと飛翔し、振り上げた拳をむだのない動きで叩き下ろした。  しばし呆気にとられていた巨人もさすがに防御姿勢をとったが、ヒットの瞬間吹き飛ばされる。  体躯の差をもろともしない怪力がなせる力だ。 「ほんまは月見酒でもしてたいんやけどなぁ」  彼、現世の酒呑童子こと宮酒鬼市(みやさかきいち)は気怠げに北欧の巨人を見下していた。 「なぁ月野」 「あ?」 「【酒ノ又三朗(さけのまたさぶろう)】貸してくれよ」  肩越しに振る返り、鬼市はにやっと笑った。 「まさか」 「そうやな。辛めの妖酒でもだしてくれや」  彼はそう酒を所望した。
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