壱拾頼 月野陽一は祈る

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「相手があんたじゃなきゃ、それもいいんかもしれんね」  彼は顔をしかめながら、めがねを人差し指で押し上げていく。  あまり相手にしたい女ではない。  が、無視するにはあまりにもある意味危険すぎる相手でもある。 「用向きはなんや?」 「せっかちですね。鬼の自覚が出てきたと言って、特徴である短気まで真似しないでいいのですよ?」 「やかましいわ」  彼は苛立ちを隠そうともせず、胸ポケットにねじ込んでいた煙草【わかば】を取り出した。 「あら、同居と同時に禁煙されたと聞いていましたが」 「……お前さん等が面倒こしらえなけりゃ、やめれるんやけどな」  かまわず【わかば】に火をつける。 「で?」  紫煙を吐き、剣呑な目つきで彼女をにらんだ。 「ある一派が行動を開始しました」 「へぇ」
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