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「名は【義死鬼】またの名を八面大王という」
「……知らへんな」
「知らないことはないのですよ」
彼女の言葉に、怪訝そうににらみ返す。
「義死鬼の妻を滅ぼしたのは、ほかでもない貴男と彼女なのですから」
「……俺と輝ってことか?」
ここにはいない恋人、華峰院家次期党首である羽根井輝。
彼女と共に滅ぼした相手……
「まさか、三年前の」
「そう、華峰院家を乗っ取り、この古都をめちゃくちゃにしようとした鬼女【紅葉】」
まさに苦い記憶だった。
まだ何かあるというのだろうか。
「まずはその先兵である【悪路王】が動いているのですよ」
女……晴羅の言葉に、肺一杯に紫煙をため込め彼は吐き出した。
「それで貴男はどうします? 現世の酒呑童子さま?」
宮酒鬼市は、ひどく疲れた顔から鬼の顔へと変わっていった。
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