壱拾頼 月野陽一は祈る

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 陽一は走っていた。  ただ痕跡を頼りに、跡を追いかける。  色の付いた石。  それが断続的に落ちている。  おそらくは梨杏が残していったものに違いない。  石は山のほうへと続き、清水寺の境内から抜けていっていた。  予想通りならば、そこに梨杏とフルドラがいるはずだ。  巨人と負傷したケイは鬼市に任せてきた。  あの男ならば、問題なく巨人くらいねじ伏せるに違いない。  付き合いらしい付き合いがそれほどあるわけではないが仕事の関係上、顔をつきあわすことは幾度かあった。  極力、争いごとなどに首を突っ込みたがるような性格ではない。それが出てきたのだから、何かあるのだろう。
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