壱拾頼 月野陽一は祈る

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 いつの間にか山頂付近までやってきていた。  夜だったはずなのに、徐々に闇が薄くなってきていた。  逃げ続けてどれくらいの時間がたったのだろうか。  行き着いた先は、開けた場所だった。  東山山頂公園。  山頂から見下ろす絶景ポイントでもあるこの場所はカップルにも人気でもあるが、この時間に人がいるはずもなく、朝方近くともあって見下ろせる街も静まりかえっていた。  移動している間に結界からも抜け出してしまったらしく、空の色も通常のよく見る灰色となっていた。  肩で息をしながら、フルドラは周囲を見回した。   誰もいないはず。  気配は何もなかったはず……だった。 「いやぁ、えらい遅かったですなぁ」
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