壱拾頼 月野陽一は祈る

9/16
前へ
/150ページ
次へ
 その声に彼女は飛び上がった。  振り返ってみれば、そこに梨杏の姿があった。  もっとも、フルドラがしてみれば得体の知れない異国の怪士でしかない。   「あんじょう逃げはったが、ここが終着でんな」 「……」 「利用されとるだけやろが、けじめはつけてもらわなね」  爽やかな笑みを浮かべながら、梨杏はゆっくりとフルドラに近づいていく。  だが、そんな彼の顔が凍り付いた。  彼女にはその理由が分からなかった。 「あかん、逃げや!」  梨杏が叫んだ瞬間、フルドラの胸から黒い刃が飛び出していた。
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加