39人が本棚に入れています
本棚に追加
「……っ!」
目を見開き、自らの胸から生える刃を見ながら彼女はゆっくりと倒れ伏していった。
「相も変わらず、えげつないやっちゃで」
怒りの形相を浮かべ、梨杏はソレを睨み付けた。
「所詮は使い捨ての駒。使いどころを見極めて、使い切るというのは当然のことですよ」
「けったいなことばかり言いよるわ。そないに格好付けたたところで、ぶさいくな怪士にゃかわらんで」
なぁ、【悪路王】……そう梨杏はもらした。
手放した刃の代わりを右手から生み出しながら、悪鬼【悪路王】は悠然と梨杏の前に立ち塞がった。
見事な二本角にざんばらとなった白髪。筋肉質な者が多い鬼にしては、細身の体つきだった。殺気を帯びたその風体はまさに抜き身の真剣のような冷たさを醸し出していた。
「古都の掃除屋か。【ぬりかべ】ごときが、よくもそんな大層な役目をおっているな」
「ははっ、えらく頭が固いやないか。そんなんやから、人間なんぞに滅ぼされるんよ」
梨杏の挑発的な言いように、場の空気がさらに凍り付いた。
最初のコメントを投稿しよう!