壱拾頼 月野陽一は祈る

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「我らは滅びぬ! 今度こそ、都を我らの手に墜とすのだ」 「なんやそれ、時代錯誤も甚だしいやないか」  梨杏はそう嘆息しながら言い、そっと倒れ伏すフルドラの様子を見た。  地面を赤く染めていっている。  手当をすぐにしても持ち直すかどうか。 「今回は、出てこんと思ってたんやけど、どないしたんや?」 「少し目障りに思っただけですよ」 「へぇ? そら難儀なこって」  挑発するものの、妖怪としての格は向こうの方が上だった。  さらに言えば、あまり戦闘向きの性質ではない。 「時間稼ぎはみっともないですよ!」  そういった瞬間、【悪路王】が切り込んできた。  鋭い太刀筋をすんでで躱しながら、後退ではなく逆に姿勢を低くし、ラグビーさながらのタックルを仕掛けた。
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